平成22年度 教育研究実施計画
H22.3.8
研修部
1 研究主題
『科学的思考力を育てる指導と評価の一体化』
〜「設計図の範例」を生かした学習の展開〜
2 研究主題設定の理由
本校は,平成5年度以来,「設計図」とよばれる方法を用いて,児童に科学的思考力を表現させる授業づくりに取り組んできた。当初は,「実験計画の設計図」として指導を始めたが,研究を重ねるうちに,一連の問題解決にかかわる思考の流れを「設計図」として指導するようになった。また,その指導の中で科学的思考を促す言語表現の活用を図り,「言語技術」を活用した授業づくりを展開し,児童の思考力や表現力を高める研究を進めてきた。そして,事象提示の工夫を図り,児童の素朴な見方や考え方を,観察,実験などの問題解決活動を通して,少しずつ科学的なものに変容させていく主体的な学習活動になりうる授業づくりを行ってきた。
更にこの二年間は,生活とのかかわりを重視した単元構成を仕組み,設計図を活用した科学的思考力の育成に取り組んできた。成果としては,多くの児童が興味関心をもって意欲的に学習したり,科学的思考力や表現力を向上させたりする姿がみられた。また,昨年度より「設計図の範例」を取り入れることで科学的思考力の評価基準が明確になり,個の伸びを確かめられるとともに,C基準の児童への手立てがはっきりとし,適切な指導を行うことができた。次へのステップとして,児童の具体的な記述を事前検討して「設計図の範例」の妥当性を更に高める必要がある。
平成21年度の全国学力・学習状況調査における課題として,問題の読解力や基礎・基本の定着,記述力が挙げられた。読解力については,算数の文章題を繰り返し読み,お話を頭でイメージし,図式化した後に立式するという流れをパターン化する授業改善に取り組んできた。基礎・基本の定着については,ドリルタイムなどを活用して反復練習をしてきた。また,言葉タイム※などの活動を通して,多くの児童が言語スキル(特に結論先行・ナンバーリング)を身につけ,記述量を増やしてきた。
このような実態から,明確で具体的な評価基準をもち,児童に身につけさせたい基礎・基本となる学習をおさえ,単元や授業を構成すれば,一人一人の科学的思考力を伸ばせるだろうと考えた。また,評価をもとに,解決すべき問題に応じて科学的思考を深めることが困難な児童に対しても明瞭な指導・支援ができると考えた。
このことを踏まえ,本年度は,単元構成及び1単位時間の授業構成の二点を工夫したい。
はじめに,単元の構成については,次の3点に留意したい。1点目は,生活とのかかわりを重視した実感を伴った理解を得られる主体的な問題解決となりうる授業づくりを工夫していくことである。2点目は,単元終了時に実施する,学習を通して身につけた科学的思考力を見取る検証問題の作成である。3点目は,期待する科学的思考力を働かせて書いたA基準,B基準の「設計図の範例」を事前に作成することである。そして,全児童のB基準以上の達成を目指し,この単元において身につけさせたい基礎・基本となる学習内容と科学的思考力を明確にした単元計画を作成していく。
次に,1単位時間の授業構成については,本時に記述させたり,発表させたりする「設計図」の活用場面を明確にし,一人ひとりの科学的思考力の見取りやそれを高めるための指導を工夫していくことである。
このように,本年度は,研究主題を「科学的思考力を育てる指導と評価の一体化〜設計図の範例を生かした学習の展開〜」と設定し,指導者が児童一人ひとりの科学的思考力を明確にとらえ,個に応じた指導を徹底するとともに,児童に基礎・基本となる学習内容を確実に理解させ,それを表現し合う授業を工夫し,児童が問題解決の活動を通して身につけた科学的な見方や考え方を活用できる力の育成を目指したい。
※本校で取り入れている朝会時(15分間)で実施している学習活動
3 研究の基本的な考え方
(1)本校の定める「科学的思考力」
問題解決の能力や科学的な見方や考え方を形成していく際にはたらく思考を「科学的思考力」とし,学年の系統性を踏まえた表を次に示す。
注1)
○は学習が可能な学年を,◎は各学年に設けられた見方・考え方(比較・関係づけ・条件・推論)を育てたい場面を示している。
注2)太枠は,「設計図の範例」で評価する場面。
注3)第1・2学年は生活科の学習であるので,問題解決場面に直接つながるものとは考えていない。あくまでも思考の系統性という見方で表記している。
「問題解決場面とつけたい科学的思考力」
|
問題解決場面 |
科学的思考力 |
1・2年 |
3年 |
4年 |
5年 |
6年 |
|
問題把握 |
問題を見出す力 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
予想 |
予想を立てる力 |
○ |
◎ |
○ |
○ |
○ |
|
仮説を立てる力 |
|
|
|
○ |
◎ |
|
|
計画 |
解決の方法を考える力 |
○ |
○ |
○ |
◎ |
○ |
|
比較・分類 (実験・観察) |
比較する力 |
○ |
◎ |
○ |
○ |
○ |
|
分類する力 |
○ |
○ |
◎ |
○ |
○ |
|
|
関係把握 (結果・考察) |
事実をとらえる力 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
図やグラフに表す力 |
|
○ |
○ |
◎ |
○ |
|
|
結論付ける力 |
|
○ |
◎ |
○ |
◎ |
|
|
原理応用 (検証問題) |
原理や法則を適用する力 |
|
○ |
○ |
○ |
◎ |
(2)科学的思考力を見取る「設計図の範例」
「設計図」の記述から科学的思考力を指導者が見取るために,あらかじめ設定した評価基準に則り,具体的な学習場面における「設計図の範例」を作成する。(「設計図の範例」はルーブリック評価の考え方を基にした本校独自の評価方法である。)この範例を指導者と児童が共有することで,児童が自分の立ち位置を自覚し,より高い次元を目指そうと意欲的に学ぶことができる。
次に,「設計図の範例」の観点を示す。
ア)予想の場面
|
評価 |
評価基準 |
ことばの教育との関連 |
|
A(とてもよい) |
予想の根拠を既習事項・生活経験をもとに問題を具体的に説明できる。 高学年では,予想をもとに仮説を立てられる。 |
○1段落目…予想 「〜になるだろう。」 ○2段落目…その理由 「〜からである。」 ○仮説の書き方 「(根拠)ならば,(方法)すれば,(問題)になるだろう。」 |
|
B(よい) |
予想の根拠を既習事項・生活経験をもとに挙げられている。 |
|
|
C(もう少し) |
予想ができているが,根拠が先行経験とつながっていない。 |
イ)計画の場面
|
評価 |
評価基準 |
ことばの教育との関連 |
|
A(とてもよい) |
予想や仮説を確かめるために観察・実験の方法について,図と照らし合わせながら,順序よく正しく述べられており,実験結果の見通しから,検証の見通しが述べられている。 |
○順序 「まず」「次に」… ○モデル図(準備物の名前・注意点・矢印・吹き出し) ○検証の見通し 「〜の実験において(実験の見通し)になるならば,○○であると言える。(確証)」 「〜の実験において(実験の見通し)になるならば,○○ではないと言える。(反証)」 |
|
B(よい) |
観察・実験の方法について,図を用い順序よく正しく述べられている。 |
|
|
C(もう少し) |
観察・実験の方法について,断片的に述べられている。 |
ウ)関係把握・原理応用の場面
|
評価 |
評価基準 |
ことばの教育との関連 |
|
A(とてもよい) |
結果から考察したことを予想や仮説と関係づけて,考えたことや新たな疑問を述べている。(必要に応じてモデル図をかき,関連させて述べている。) |
○1段落目…結果 「〜なった。」 ○2段落目以後…結果からわかること。 「(結果)から〜ことが考えられる。」 ○最終段落…結論 「以上のことから,私の実験・観察の予想は〜だったが,結果は〜になったことから,〜と考えられる。」 「新しく疑問に思ったことは〜。」 ○モデル図(矢印・吹き出し) |
|
B(よい) |
結果から考察したことを述べている。(必要に応じてモデル図をかいている。) |
|
|
C(もう少し) |
結果と分かったことを明確に分けずに述べている。 |
これらの観点を踏まえて,単元の学習内容を盛り込んだ「評価Aの範例」,「評価Bの範例」を評価基準をもとに作成し,「評価Cへの手立て」を工夫する。これらの範例や手立てを指導案に示すとともに,個に応じた指導を繰り返し行い指導と評価の一体化を図る。
(3)検証問題について
単元の学習を通して身につけた知識の活用や科学的な思考力の伸びを見取るための方法として,学んだことを生かして解く検証問題を単元のプレテスト・ポストテストとして実施する。その結果を分析し,一人ひとりの思考力の伸びを見取ったり,更に個別に指導すべき課題を明らかにしたりする資料の一つとする。生活にかかわった事象や教科書の発展問題などを参考にして,指導者が問題を作成する。検証問題の解答も科学的思考力を見取る「設計図」の一つとし,事前に範例を作成しておく。
4 研究仮説
○生活科・理科の学習において,指導者が設計図の範例を明確化し,指導と評価を一体化した授業展開を工夫しながら,実感を伴った主体的な問題解決を図る学習を進めれば,児童は意欲的に学習へのぞみ,確かな科学的思考力を身に付けられるであろう。
5 研究内容
(1)研究教科 生活科・理科
(2)研究の具体策
@ 生活とのかかわりを重視した単元を構成する。
・ 生活とのかかわりのある検証問題の作成。
・ 生活から入り生活へ出る単元構成。
・ 基礎・基本となる身につけさせたい学習内容をおさえた単元構成。
A 指導方法の工夫・改善を図る。
・ 事象提示および評価基準提示の工夫
・ 設計図(思考の流れが分かるノートおよびワークシート)の指導
・ 科学的思考を促す言語表現の活用(話し合い活動・設計図の記述)
・ 「設計図の範例」をもとにした評価と個の課題に応じた指導
B 評価の工夫・改善を図る。
・ 「設計図の範例」の妥当性を高める事前研究
・ 児童との評価基準の共有化
6 検証の指標
(1) 授業評価(研究の具体策8点を示した評価項目について3段階評価)
(2) 「設計図の範例」をもとにした「設計図」の評価
(3) CRTによる科学的思考力の客観的評価
7 達成目標
(1) 授業評価において,B評価以上を80%以上達成する。
(2)@本時の思考の評価において,80%以上の児童がB評価以上を達成する。
A単元後の検証問題において,80%以上の児童がB評価以上を達成する。
(3) CRTにおいて,80%以上の児童が評定2以上を達成する。
8 研修の進め方
○事前研修(指導案検討・「設計図の範例」検討・検証問題の検討・模擬授業)
○授業研究会
○事後研修(研究協議会・授業のまとめ作成)
9 校内研修に携わっていただく指導者
○藤井浩樹先生(岡山大学准教授)
○小原正啓指導主事(東部教育事務所)
○河野政樹先生(障害者療育支援センターわかば療育園)
○実光紀之先生(元世羅西中学校長)
○坂本
○安清雪子先生(元大見小学校長)